バニラ

ジタンの妹。
まるで毛糸玉みたいにふわふわしたまっ白な毛皮の女の子です。

お母さんは美しい白猫でしたが、バニラが生まれてまもなく亡くなってしまいました。

エピソード:
バニラはそっと城門をぬけだしました。
「しめた!」ほくそえんだのは城を見張っていたキマイラです。思いのほか早く獲物は現れました。計画どおり、きれいな鞠に化けたキマイラは、バニラの足元にころころ転がっていきました。

「あら!」目を輝かせたバニラはまんまと計略に引っかかりました。ポトンポトンと石段を落ちていく鞠を追いかけ、石畳を転がる鞠を追いかけて、バニラも街へ入っていきました。「つかまえた!」と思ってバニラがひろおうとすると、また鞠は転がり、逃げだしていきます。うさぎ横丁のうさぎたちも立ち話をしているアローラやいたちも、鞠を追いかけていくバニラを、目を細めて見送りました。夢中になって追いかけるうち東の門までやってきました。
東の門を鞠はころころとぬけていきました。門の脇に建てられた塔の窓から見ていた門番は「おや、鞠が転がっていっちゃった。私がとってあげましょうか」バニラに言いました。
「ううん、自分で行くわ」門番は東の門をくぐった橋の上でやっと鞠をつかまえてこちらに手をふるバニラに、にこにこと手をふりかえしました。それから門番はのんびりと昼寝をはじめました。
長くひとつのものに化けていられないキマイラ、今度は青い羽の蝶に早替わりしました。手に持っていたはずの鞠がいつのまにか消えてしまい、べそをかきかけたバニラの前できれいな羽をひらひらさせて見せます。
「わあ、きれいなちょうちょ!」バニラは鞠を忘れて、今度は蝶に夢中になりました。これを捕まえて帰ったらどんなにトラが感心するでしょう。思わせぶりに飛んでいく蝶をバニラは追いかけました。そして、パシッ!意外にすばやく、高いジャンプで蝶を両の手で捕まえました。爪が引っかかって「キャウ!」叫ぶとキマイラはもとの姿に戻ってしまいました。

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