グラン

ジタンの父であり、我が強く自分の思ったとおりにタシルという国を治めてきたタシルの国王でもある大猫グラン。

ちょっと気が短く風の王とは親友だったのですが、10年ぐらい仲違いをしていた時期もありました。


エピソード:
城の中庭、石の広場を埋めつくすほどに市民たちは集まっていました。泣いたり、ニンゲンをののしったりと、蜂の巣をつついたような騒ぎも、城の大扉の前、石段の上にグランが姿を現すとじょじょに静まってきました。グランは両手を挙げてさらに静めると、よく響く声でみなに向け、話しはじめました。病気も老いも感じさせない昔のままの姿、声音でした。
「みなのもの!タシルに最大の危機が訪れた。今夜のハロウィーン、魔王へのそなえに加え、東のニンゲンの船が来襲した。今のところは、ニンゲンたちを鳥たち木たちが食いとめてくれている。だがそれも長くはもたないだろう。
みなのうち、ソール、テールをのぞく者はただちにフォーンの森へ避難するように。ソール、テールに属していても、年寄り、子ども、女性は全員とする。これは命令だ」
グランが口を閉じると、メスたちの間からゴウゴウと抗議の声があがりました。

「わだしはソールブラドで年寄りじゃない。今がら女性をやめるごとにするけど、それなら王様残してくれるでしょうか」バニラの乳母のトラでした。気の強いトラは魔王との戦闘を待ち望んでいました。
「王さま、敵を引きこむ罠はみんな私がつくったものです。私ぬきではテールは成り立ちません!」黒猫のマントもそう言い、それはそのとおりのことでした。
「王さまのお言葉でもわたしゃ残るよ。わたしはボーノブラドの隊長だ。長期戦にでもなったら食料確保はどうするね」アダも言いました。強硬なメスたちの反撃はもっともなはなしです。
グランは言い直しました。
「すまなかった。兵士にメスもオスもない。ただわかってほしいのは非常に危険な状況だということだ。命の保証はできない。こんな事態になってしまったのを、王としてすまなく思っている」
王の言葉にみなしんとなり、すすり泣く声も聞こえました。けれどすぐに「王さまのせいじゃない」「おれたちは自分で国を守る!」「ニンゲンや魔物におれたちの力を見せてやろうぜ!」口々に叫ぶ声があがり、王はまた両手を挙げて静めなければならないほどでした。
「みなの気持ちはわかった。ありがたく受けとめるが、残る者は命をわしと王子にあずけると思ってもらいたい!そのうえで残るかどうか自分で判断するのだ」
王は言いました。

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