グレイ

全身がグレーの毛になった、不幸な過去を持つ、おそろしく目立たない猫です。

エピソード:「すべて灰色の猫」
猫の島に来たばかりのころのグレイは、おそろしく目立たないやつでした。大将のトアンでさえ、いるのを忘れてしまうほど。いつも机の下か、ベッドの下です。グレイの母さんと兄弟は、アルスで”猫や”に捕まってしまったのです。捕獲人の網が迫ってきた時、母さんは言いました。「灰色の猫は目立たないもの。隠れておいで、生きのびておくれ」それ以来、グレイは身も心もすべて、灰色の猫になったのです。
さて、たくさんの猫の集まる猫会議の日、グレイは演説台の扉の中に隠れましたが、外の騒がしさに心臓が早鐘のように鳴りつづけました。ところが、ひょんな拍子に、扉がバーン!!と開いてしまい、たくさんの猫の目がいっせいに、グレイを見つめたのです。その瞬間、グレイは暗闇にとけ込みたいあまり、一瞬にして灰色の”気”と化してしまいました。
それからというもの、グレイは島中どこを歩きまわっても、見とがめられることはありませんでした。
ただ、年に一度の猫会議の日だけは、誰にも気づかれず、皆と一緒に夕陽を浴び、灰色の”気”の中で、瞳だけ金色に光るのでした。

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